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あなたの燃える手で

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彼女の秘密

【50万ヒット記念作品】



 の秘


プロローグ
そのカフェのドア開けると、中は別世界のように涼しかった。
あたしの好きなカフェ『アマデウス』。
彼女との約束の時間までまだ30分ある。あたしはいつもの場所に座わり、
約束の時間まで、読みかけのミステリーを開いた。


本から顔を上げると、目の前のアイスコーヒーを一口飲んだ。
店のガラス越しに炎天下の「夢の森商店街」を歩く人々が見える。あたしはその中に、白いワンピースを着た彼女の姿を見つけた。

(やっぱりTVで見たのは……静江さんだ)

彼女もあたしに気付き、店に入ると小さく手を振った。
「ごめんなさい、待った?」
彼女はあたしの前に座るなり、バッグから紫色の扇子を取り出し広げた。
この店でバイトをしているミニスカートを履いたボーイッシュな子が、水を持ってやって来た。
「いらっしゃいませ……」
「アイスコーヒーを下さい」
「はい」
その子は笑顔で返事をすると私達に背を向け、綺麗な脚を見せながら厨房に歩き去った。
あたしも彼女に負けないくらいのミニスカートを履いている。上には胸元が大きく開いた、Vネックのサマーセーターを着てきた。
前に座っている彼女の視線が、いつものようにあたしの胸元に注がれている。この組み合わせが彼女の好みなのを、あたしは知っている。
「ママー! アイスコーヒーでーす!」
厨房の奥で彼女の可愛い声が聞こえた。

「暑いわねぇー、もう倒れそう。四十路になると特にこたえるわ」
彼女は扇子で風を送りながら片手でグラスを押さえ、ストローからアイスコーヒーを一口飲んだ。グラスの中で氷が転がった。
いつもの綺麗な爪。長いフワッとした髪が扇子の風に揺れている。
「そんなこと言って、静江さん。今年40になったばりじゃないですか」
あたしも一口飲む。あたしのグラスは既に汗をタップリかいている。
「そうは言ってもねぇ、あたしと一回り違うんだっけ? 直美ちゃん」
「はい、今年28ですけど、それでもこの暑さは……異常ですよね」

(何故? 何故静江さんが? 保険金殺人なんて信じられない)

思えば彼女と知り合ったのもこの店だった。
あれは1ヶ月前位だったろうか、あたしはいつも時間が出来るとこの店で本を読むことが多かった。何故か女の子の多いこの店が、どこか安心できたのかもしれない。
そんな時、あたしは彼女の……、静江さんの存在に気付きはじめた。
店に入った時、読書の途中でふと時計を見上げた時、いつもそこにあたしを見る静江さんの視線があった。そんなことが繰り返され、いつしかあたしは静江さんと挨拶を交わすようになっていた。
それから程なく、あたし達は一緒にお茶をするようになっていた。
お互いの性癖を知るのに時間は掛からず、お茶を済ませると静江さんの家に行き、二人でいつもの行為に及ぶのだった。

「そろそろ行きましょうか」
「はい」
あたし達は30分ほど時間を潰すと『アマデウス』を出た。
それから10分後、あたしの携帯が着信を告げた。
「もしもし、……うん、今日はチョット……、ごめんね」
それだけ言うと私は携帯を切り、バッグに仕舞った。

静江さんの自宅は『夢の森』の西口の住宅街の比較的はずれの方にあった。
あの有名な一際目を惹く大きな邸宅を通り過ぎ、『夢の森教会』のある公園近くまで歩いた所にある。
その家は80坪ほどの敷地に建った洋風建築の家で、白い猫を1匹飼っていた。
「おじゃましまーす」
「どうぞ、上がって……」

(この家も見覚えがある。TVで見た。でもやっぱり信じられない……)

静江さんの家に上がると、静江さんは必ず飼っている白い猫におやつをやる。
彼女は持っていたバッグからキャットフードを出すと、あたしに見せた。

「このキャットフード珍しいでしょ。日本には売ってないのよ。わざわざアメリカから取り寄せているの。さぁ、おいでエマニエル……」
もう何度も聞いたそのセリフを繰り返すと、彼女はそのキャットフードを床に置いた猫用のボールに一掴みほど入れた。
その白い猫は右目が金で左目が緑のヘテロクロミアだった。小さなドーナツ状の茶色いスナック菓子のようなそのフードを、白い猫は喜んで食べていた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土