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あなたの燃える手で

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花散る午後

21
2月も下旬に差し掛かったある日、志帆の教室のメンバーが顔を揃えていた。
稽古も終わり、志帆と向かい合った5人の前には、生けられた色とりどりの大小の花が並んでいた。
正座をしている志帆は改めて襟元をただすと、おもむろに口を開いた。
「今日は皆さんに嬉しいお知らせがあります。この春、ここ「夢の森」にグランドオープンする『ホテル・クイーンホリデー』の式場とメインロビーのお花を、うちで生けさせてもらえることになりました」
「まぁ、本当ですか? 凄いわ」
リーダー格の綾子も知らないことだったらしく、新鮮な驚きを隠せないでいるようだった。
「おめでとうございます。志帆先生」
美幸が長い指を畳みに付け、頭を下げた。それを皮切りに他の生徒達も口々に祝辞を述べていった。更に志帆は言葉を繋いだ。
「そこでわたしは、ロビーの一部をお借りして、この水密流の生け花展を開催いたしたいと思っています」
「生け花展を……」
「生け花展と言っても、表向きそう銘打って行うわけではありません。でも皆さんの作品を多くの人たちに観てもらう、そう言った機会はなかなかありませんから、これを機に一人一人の作品を展示したいと思っています」
奈津子は無意識に俯いていた。まだ経験の少ない自分が、作品を出展するというのはまだ早いように思われ、胸の中に戸惑いが広がった。
志帆はそんな奈津子の挙動を見逃さなかった。志帆は奈津子を見つめた。
「奈津子さんはまだ習い始めてまだ日が浅いですから、わたしがフォローしていきます」
「よろしくお願いします」
奈津子は三つ指をついて頭を下げた。
志帆を含む5人は、その姿を満足そうに眺めていた。
「詳しい日取りはホテル側から通知がありますので、分かりましたら追って連絡いたします」

そして1週間後、『ホテル・クイーンホリデー』からの桜色の封書が届いた。
そこにはグランドオープンの日程、当日の手配等が書かれていた。
そして最後に、生徒全員の ”1泊無料宿泊サービス券” が添付されていた。
それを知った生徒達は、普段の稽古にも熱が入った。

オープン当日の朝、奈津子達は志帆の家に集合した。オープンの3時間前にはホテルに入り、展示の準備をしなくてはならない。志帆を中心にミーティングを済ませると、それぞれの荷物を確認した。
その時、奈津子の視界に志帆のバッグの中に縄のような物が入っているのが見えた。当然奈津子は何も言えず、そのまま志帆の家を出た。

まだ冷たい風の吹くは3月にしては暖かな日和で、快晴の空からは柔らかな日射しが降り注いでいた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土