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あなたの燃える手で

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白い魔女 7


「出来たわ、やっと出来た。最凶にして最高。禍々しき悪魔の媚薬が……」
夢の森病院院長の如月真弓は、白衣のポケットの中で小瓶を握りしめた。



白い
女 7
P
ink Magnum



PROLOGU 
『夢の森病院』は、『夢の森駅』の東口にある。
バスターミナルや幹線道路、商店街などがある西口に比べ、東口は昭和の街
並みをまだ色濃く残している。そんなレトロな街並みに、その病院は一際目
立つ白亜の巨塔として聳え建っていた。
そしていつしか、白い病院と呼ばれるようになった。

夢の森病院に行くのは簡単だ。東口を出れば、一目で白亜の巨塔がそれと知
れるだろう。そして線路沿いを10分も歩けば着く。
この病院は外来棟のA棟と、入院棟のB棟から構成されており、共に5階建
ての2棟は向かい合い、両端は渡り廊下で結ばれている。A棟とB棟の間は
中庭になっている。
この病院を空から見れば、巨大なロの字が3Dのように見えるだろう。



白衣の裾を翻しながら、1人の女医が廊下を歩いてくる。
夢の森病院院長『如月真弓』。
翻るたびにチラチラと見えるふくらはぎから足首は、それだけで相当な脚線
美の持ち主であることが窺える。張り出した胸。引き締まった腰、そして再
び豊かなヒップへと流れるようなラインは、日頃のジム通いの成果が確実に
現れているようだ。肩より長い黒髪は軽く波打ち、切長の目と薄い唇は、彼
女を酷薄に見せるのに十分だった。
真弓は左手を白衣のポケットに入れたまま、右手のスマホを耳に当てた。

「あっ、婦長。今日はもう終わりよね……。そう、それじゃ着替えたら院長
室に来て……。あたしも今向かってるから。それじゃまた後で……」
真弓はスマホを切ると、院長室と書かれたドアを開けた。

院長の如月真弓と婦長の御堂雪絵は、女同士の関係にあった。
二人きりになるのはいつも院長室で、それ以外の場所ではそんなコトはおく
びにも出さず、常に業務に没頭している。
もう何年も続くこの関係を、院内で知るものは誰もいなかった。

真弓は院長室に入ると正面の大きな机に歩み寄り、ポケットから出したガラ
スの小瓶をソコに置いた。掌に収まる程のその小瓶は、ピンク色の液体で満
たされており、5階の窓から望む南の空をも赤く染める夕日に、一際赤く輝
いていた。
真弓は暮れなずむ低い街並みを、女帝のような気持ちで見下ろした。

院長の如月真弓が5階の院長室に入った頃、1階の更衣室では婦長の『御堂
雪絵』が帰り支度を終えていた。
彼女は更衣室を出ると、その足で奥のエレベーターへと向かった。
1日の仕事を終え、あとは帰るだけのハズの彼女が、看護師の通用口とは反
対に歩いていく。そんな彼女を1人の看護師が見咎めた。
「あらっ、御堂婦長どちらへ? お忘れ物ですか?」
「うん、そうなの。チョットね……」
「そうですか……。それでは婦長、お先に失礼します」
「はい、お疲れ様……」

1階に待機していたエレベーターに乗ったのは自分だけだ。5階のボタンを
押すと、足元にフワリとした浮遊感が生まれた。
「何かしら? こんな急に……。いつもは数日前から予定を決める人が」
一抹の不安をよそに、エレベーターは御堂を5階に運ぶ。そして静かに白い
扉を開けると、彼女を吐き出した。そこから伸びる長い廊下を奥まで歩き、
院長室の前まで来ると、そのドアを2回ノックした。
「どうぞ……」
「失礼します」
静かにドアを開け、静かにドアを閉めた。
「早かったわね、雪絵」
「はい院長。ちょうど着替えをしていた時でしたから……」
「もう、雪絵ぇ、2人きりになったら、もう院長と婦長じゃないのよ」
「ごめんなさい。ついクセで……。2人きりの時は真弓でよかったのよね」
「そうよ。誰かいる時は院長と婦長。2人きりの時は真弓と雪絵よ」
「わかった……、気をつけるわ」
「それで、なんなの突然。珍しいじゃない。当日に呼び出すなんて……」
「ごめんなさいね。でもね、嬉しい報告だから。早く言いたくて、つい」
そう言ってニヤニヤと微笑む真弓は、どこか誇らしげだ。
「嬉しい報告? って、なぁに?」
すると真弓は、妖艶で酷薄な笑みを浮かべるとこう言った。

 出来たのよ、ついに出来たの。ア・レ・が……。



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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土