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あなたの燃える手で

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春を画く

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木の裂ける音と先生の悲鳴。それが最後に聞こえてきました。

「やっぱり……」
スマホでの先生とのやり取りの中で、 "それがあのサボテンでも、そうじゃ
なくてもどっちでもいい" と言ったのは、先生の性格を知り尽くした故の、
セリフだったのです。
先生は仕事柄、何事も中途半端を嫌います。そうならそう、違うなら違う、
ハッキリさせたい人なのです。
あたしが言ったあのセリフを聞いて、先生はそれがサボテンなのか違うの
か、見極めようと手摺りから体を乗り出したのではないでしょうか。そして
下を見た。そんなコトをしたら、細工をしたあの手すりは簡単に……。

今のあたしに、先生の生死を確認する術はありません。
残る心配は、先生がスマホを手にしたまま落ちた時のことです。自分で警察
に連絡することも考えられます。でもその時はその時です。別にあたしが怪
しまれるコトはないハズです。
でもその時は、あたしにも連絡が来るのではないでしょうか。もし連絡が来
なければ……。とにかくあたしは、先生か警察から連絡があるまで、気長に
待つしかありません。もしくは日を置いてからこちらから出向き、発見を装
うか……、です。
もう一度電話をするワケにも、双葉にも連絡できません。通話記録が残りま
す。先生の危機を知ってどうして警察に連絡しtなかったのか。というコトに
なるでしょう。
今このスマホで、滅多なことは話せないのです……。

あたしはスマホを机に置くと、双葉の眠るベッドに腰掛けました。
そして片手で彼女の腰のラインを、毛布の上からなぞります。
二葉……、可愛くてイヤラシイ女。もうすっかりあたしの奴隷になってる。
このまま先生がいなくなって二人きりになれたら、毎日可愛がってあげる。
そう、毎日毎日。それがもうすぐ現実になる。裸にして、縛り上げて、吊る
して……、苦痛を与え快感を与える。
それは忘れられない悦楽となって、もうあたしから離れられなくなる。あた
しなしでは生きていけない体になるの。
すると双葉が目を覚ましました。
「起きた?」
「あっ、うぅん……」
「うまくいったみたいよ」
「えっ?」
「先生……。今、電話したの」
「落ちたの? あそこから……」
「多分ね。 "バキッ" ていう音と、悲鳴が聞こえたから」
「そうなんだ」
「まずは様子見ってところね。このまま数週間経って連絡がなければ、あた
し達が第一発見者ってコトになるわ」
「うん」
「先生一人で何週間もアトリエに篭ることは今までもあったから、別に珍し
いコトじゃないわ」
「そうなんだ」
「そうね。いつものコトだと思っていたけど、連絡がつかなくて……、って感じかしら……」

頭の中で想像以上の悪知恵が、グルグルと回転していくのが分かりました。


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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土