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あなたの燃える手で

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マリアの一人旅


マリアの一人旅


PROLOGUE
「昔からね、 "可愛い子には旅をさせよ" って言うのよ」
「でも一人でなんて……、あたし……」
「大丈夫。とってもいいところよ、卍庵は。マリアもきっと気に入るわ」
「でもぉ、やっぱり麗子様も一緒に……」
「あなたのことは卍庵の女将によく言ってあるから。心配しないで大丈夫」
「でもぉ~」
「せっかくの夏休みなんだから、楽しんでいらっしゃい。たまには一人旅も
いいものよ。ゆっくり羽を伸ばしてくるといいわ」

3日後、マリアは卍庵へと旅立った。


「へぇ~、ここが卍庵かぁ~。思ってたより大っきい」
そう言ってマリアは、目の前の五階建ての純和風建築の旅館を見上げた。
なんでもこの卍庵は、男子禁制の女の宿。江戸の昔から女だけの、 "女しか
愛せない女のための宿" だと麗子から聞いていた。
「女しか愛せない女のための宿ってさぁ、つまりそういうコトでしょう?」

昨夜聞いた卍庵の女将の話にマリアは興奮した。そして旅行前の一夜を麗子
と過ごした。だから今も、その胸に悶々としたモノが息を潜めている。
麗子でもママでも、そして響子でもない。卍庵の女将といういつもと違うパ
ートナーに、マリアは不安を隠せない。そして昨夜の話も相まって、期待も
してしまう。
正直、後ろめたい気もする。しかしこれは麗子のお墨付きなのだ。
「ここまで来たらもう、虎穴に入らずんばナントカ……、でしょう」

マリアは一度大きく深呼吸をすると、卍庵の正面玄関を開けた。
すぐに奥から声がし、一人の美熟女が現れた。   
一見優しそうな目は、獲物を狙う狡猾そうな光を宿し、スッと通った鼻筋の
下には、柔らかそうな唇が赤く塗られている。マリアに微笑む艶かしい笑顔
は、若い女にはない何か裏のある妖艶な笑顔だった。
マリアはそんな笑顔に、頭をペコリと下げた。
「マリアです。よろしくお願いします」
「いらっしゃいませ。わたくし、当庵で女将を任されております、密百合と
申します。マリアさんのコトは、氷見川様から伺っております」
「そうなんですか」
「はい。マリアをくれぐれもよろしくと……。どうぞ、お上がりください。お部屋にご案内いたします」

マリアは女将に促され靴を脱いだ。
磨き上げられた床を踏みながら、スルスルと歩く女将の後ろを付いていく。
スタイルの良さそうな体を、黒字に白百合が咲き乱れる着物で包んだその後
ろ姿が、伝統的な日本建築に溶け込んでいる。
エレベーターで五階に上がると、女将は一番奥の部屋まで歩いた。
「こちらのお部屋が "百合と柘榴の間" で御座います」
女将はそう言うと、襖をスルスルと開けた。
「どうぞ、お入りくださいませ……」

部屋に入って、まずマリアの目についたのは、太い柱や梁だった。ツヤツヤ
と黒光るそれらは、時代を感じさせる重厚さを醸している。
梁から足元へと目を移せば、そこには低いテーブルと、それを挟むように置
かれた二枚の座布団があった。
マリアは取り敢えず、テーブルの横に荷物を置いた。
そのテーブルの先には床の間があり、掛け軸が掛かっている。それは艶かし
くも見事な春画で、女同士が股間を押し付け合って喘いでいる絵だった。
「そしてこちらが寝室で御座います」
女将は両手で襖を開けると、そこにはに枚の布団が並べて敷かれていた。
「えっ? なんでお布団二枚なんですか。それもピッタリくっつけて……」
「それは、氷見川様からのお申し付けで御座いまして、マリアをくれぐれも
よろしく。たっぷりと可愛がってあげて頂戴と……」
「可愛がってって、女将さんがあたしを……、ってコト?」
「左様で御座います」
そう言って、お上は妖艶な笑顔で微笑んだ。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土