ミセスNに伝言
14
菜月は保険の外交員をしている。
そんな彼女が、仕事中にコンビニなどに立ち寄るコトは珍しくない。しかし
今日はコンビニではなく、昔ながらのスーパーマーケットだった。
買い物を済ませレジに並ぶと、そこにいたのは奈々だった。
突然の再開に、二人は驚きを隠せなかった。
「奈々さん……、ここで?」
「はい、夕方まではこうやってレジやってます」
「そうなんだぁ、あたしも仕事中なんだけどね」
「仕事?」
「うん、保険の外交員をしているの」
「へぇ~、凄ぉ~い」
まだ話し足りないが、菜月の買い物は少ない。彼女はレジを済ますと一旦ソ
コを抜けた。そして名刺に自分の連絡先を書くと、奈々の手の空いたタイミ
ングを見計らい、それを手渡した。
「ねぇ、コレ。連絡頂戴。どっか行こ」
「どっか……?」
「二人きりで楽しめるトコ」
「えぇ……、是非」
それだけ答えると、奈々は次の客の対応に追われた。
それから程なく奈々から連絡が来た。二人は休みを合わせ、電車で数駅行っ
た『夢の森駅』の、アマデウスというカフェで待ち合わせをした。
「あたしこの駅始めて降りました」
「そうなんだ、あたしは仕事でちょくちょく来るけどね」
「ココ、いいですね、駅から近いし」
「そうでしょう。それにね、あのバイトの子。響子ちゃんていうらしいんだ
けど、脚が綺麗だと思わない」
「えぇ? あぁ確かに。だから、ココ?」
「そうなの。綺麗というか、美味しそうでしょう」
「えぇ、ホントに……」
二人がほくそ笑んでいると、当の響子が二人の元にアイスコーヒーを持って
きた。
「はぁ~い、アイスコーヒー二つと、チーズケーキでぇす」
「ありがとう」
「ごゆっくり……」
それだけ言うと彼女は厨房へと消えていった。
短いスカートから覗くスラリとした脚。眩しく白い太腿の裏。そんな後ろ姿
を、二人は黙って見送っていた。
「もう、奈々さんったら、ナニいつまでも見てるのよぉ」
「そんなっ、あたし……。それに、奈々でいいですよ」
「そう? それじゃあたしも菜月で」
「いえっ、菜月さんの方が呼びやすいです」
「そう? それじゃまかせるけど。ねぇ、それはそうと……、行く?」
「えっ、あぁ、はい。あたしはそのつもりで」
「ホント? 嬉しい。あたしもそのつもりよ」
「よかった。ねぇ、奈々。あなた、ネコちゃんでしょう?」
「はい」
「それも責められ好きの、ドMのネコちゃんよね」
「そうですね。ドMのMネコです……」
「あたしはタチ、ドSのSタチよ」
「そうだと思いました。一目見た時から。だからあの日、『蒼い蟷螂』でお
会いしてからずっと気になっていました。
「あらっ、あたしもよ」
「実はね、今日はいろいろ道具を持ってきたの。使ってもいいかしら」
「もちろんです。それがあたしの望みです」
菜月は妖艶に、奈々は儚げに微笑みあった。
アマデウスを出た時、真夏の太陽が真上から二人を照りつけた。
菜月は保険の外交員をしている。
そんな彼女が、仕事中にコンビニなどに立ち寄るコトは珍しくない。しかし
今日はコンビニではなく、昔ながらのスーパーマーケットだった。
買い物を済ませレジに並ぶと、そこにいたのは奈々だった。
突然の再開に、二人は驚きを隠せなかった。
「奈々さん……、ここで?」
「はい、夕方まではこうやってレジやってます」
「そうなんだぁ、あたしも仕事中なんだけどね」
「仕事?」
「うん、保険の外交員をしているの」
「へぇ~、凄ぉ~い」
まだ話し足りないが、菜月の買い物は少ない。彼女はレジを済ますと一旦ソ
コを抜けた。そして名刺に自分の連絡先を書くと、奈々の手の空いたタイミ
ングを見計らい、それを手渡した。
「ねぇ、コレ。連絡頂戴。どっか行こ」
「どっか……?」
「二人きりで楽しめるトコ」
「えぇ……、是非」
それだけ答えると、奈々は次の客の対応に追われた。
それから程なく奈々から連絡が来た。二人は休みを合わせ、電車で数駅行っ
た『夢の森駅』の、アマデウスというカフェで待ち合わせをした。
「あたしこの駅始めて降りました」
「そうなんだ、あたしは仕事でちょくちょく来るけどね」
「ココ、いいですね、駅から近いし」
「そうでしょう。それにね、あのバイトの子。響子ちゃんていうらしいんだ
けど、脚が綺麗だと思わない」
「えぇ? あぁ確かに。だから、ココ?」
「そうなの。綺麗というか、美味しそうでしょう」
「えぇ、ホントに……」
二人がほくそ笑んでいると、当の響子が二人の元にアイスコーヒーを持って
きた。
「はぁ~い、アイスコーヒー二つと、チーズケーキでぇす」
「ありがとう」
「ごゆっくり……」
それだけ言うと彼女は厨房へと消えていった。
短いスカートから覗くスラリとした脚。眩しく白い太腿の裏。そんな後ろ姿
を、二人は黙って見送っていた。
「もう、奈々さんったら、ナニいつまでも見てるのよぉ」
「そんなっ、あたし……。それに、奈々でいいですよ」
「そう? それじゃあたしも菜月で」
「いえっ、菜月さんの方が呼びやすいです」
「そう? それじゃまかせるけど。ねぇ、それはそうと……、行く?」
「えっ、あぁ、はい。あたしはそのつもりで」
「ホント? 嬉しい。あたしもそのつもりよ」
「よかった。ねぇ、奈々。あなた、ネコちゃんでしょう?」
「はい」
「それも責められ好きの、ドMのネコちゃんよね」
「そうですね。ドMのMネコです……」
「あたしはタチ、ドSのSタチよ」
「そうだと思いました。一目見た時から。だからあの日、『蒼い蟷螂』でお
会いしてからずっと気になっていました。
「あらっ、あたしもよ」
「実はね、今日はいろいろ道具を持ってきたの。使ってもいいかしら」
「もちろんです。それがあたしの望みです」
菜月は妖艶に、奈々は儚げに微笑みあった。
アマデウスを出た時、真夏の太陽が真上から二人を照りつけた。