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あなたの燃える手で

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ママと麗子の二人旅

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ママと麗子はおしゃべりを楽しみながら、卍庵へと歩を進めた。
卍庵は近づくほどに、山に隠れて見えなかった部分が姿を現してくる。
創業当時は二階建てだった宿も今では五階建てとなった。しかしそれは当時
の姿、趣をきちんと残した、重厚な和風建築へと進化した証だった。

二人が正面から入ると、そこには古き良き時代の香りを残す空間が広がって
いた。床や太い柱はもちろん、階段や手摺り、アンティークな家具や調度品
など、全てが隅々までピカピカに磨かれている。
そんなタイムスリップしたような空間に見とれていると、奥から一人の和服
を着た女が足早にやってきた。彼女は二人の前でピタリと止まると、ペコリ
と頭を下げた。
「いらっしゃいませ……。ようこそ卍庵へ」
そう言って深々と頭を下げた彼女の美しさはどうだろう。
一見優しそうな目は、獲物を狙う狡猾そうな光を宿し、スッと通った鼻筋
の下には、厚くポッテリとした唇が赤く塗られている。
そんな顔の作る年齢不詳の笑顔は艶めかしく、若い女にはない何か裏のある
妖艶な笑顔だった。
そして二人はその着物にも目を奪われた。黒地に大小の白百合が咲き乱れ、
まさに桜風吹ならぬ百合風吹を思わせる見事なモノだ。

「わたくし、当庵で女将を任されております、蜜百合と申します」
「予約した加納です」
「はい、加納良子様と氷見川麗子様で御座いますね。お待ちしておりまし
た。どうぞお上がり下さい。お部屋にご案内致します」
女将に先導され、二人は卍庵の奥へと歩き出した。

エレベーターで五階へと上がると、女将は一番奥の部屋の前で立ち止まり、
二人に振り返った。
「こちらが今回のお部屋、 "百合と柘榴の間" でございます」
女将が妖艶な笑みを浮かべ、襖をスルスルと引き開ける。
「どうぞ、お入り下さいませ……」
女将に促され、二人は "百合と柘榴の間" へと入った。

まず目に付いたのは、一際太い梁と柱だった。それらが時代を感じさせる重
厚さを醸している。綺麗な畳に置かれた低いテーブル。それを囲む四つの座
椅子。しかしこの季節は、コタツでも良かったかもしれない。
二人は取り敢えず、テーブルの横に荷物を置いた。
上を向けば格子状の天井に綺麗な木目が並び、奥へと目を移せば、床の間に
は大きな白い百合が二輪生けてある。その後ろの掛け軸は、女同士が股間を
押しつけ合って喘いでいる、生々しい春画の掛け軸だった。
「そしてこちらが、寝室で御座います……」
女将が両手で襖を開けると、ソコには二枚の布団が並べて敷かれていた。
「あらっ、なんか意味深ね。布団がピッタリくっついて」
「あらっ、考え過ぎよ麗子……」
「内風呂はあちらに御座います」
寝室の入口で女将が舞うように掌を返すと、黒地の着物から腕が伸び、白い
肌がチラリと見えた。

麗子はその陶器のような肌を見逃さなかった。白くスベスベと艶があり、毛
穴など微塵もないきめ細かな綺麗な肌。あんな肌が全身を覆っているのかと
思うと、体の奥がゾクゾクと欲情してくる。
「大浴場は一階に御座います」
「あたし大浴場で一風呂浴びたいわぁ」
「あらっ、いってらっしゃいよ、良子。あたしは蜜百合さんに館内を案内し
て貰うから……」

それが何を意味しているか、良子には分かりすぎる程分かっていた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土