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あなたの燃える手で

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マリアのお留守番

11
麗子がパリへ発った翌日の昼下がり、マリアのスマホが着信を告げた。

「あっ、ママさんから……」
マリアはスマホを耳に当てた。
「あっ、マリアちゃん?」
「はい」
「麗子が行っちゃって、寂しくない?」
「今のところ大丈夫です。逆に清清してるくらいです」
「またぁ、そんなこといって……。ホントは寂しいんでしょう」
「えぇ、まぁ、チョットはぁ、そのぉ……」
「うっふふっ。良かったらいらっしゃい。響子ちゃんもいるし」
「はい、ありがとうございます。それじゃ、行こうかな……」
「そうよ。いらっしゃい。ケーキご馳走するから」
「やったぁ、絶対行きます。すぐ行きまぁ~す」

『カフェ アマデウス』は、『夢の森商店街』の入口にある。
夢の森駅の西口からバスターミナルを幹線道路まで歩けば、道路の向こう
に商店街があり、その入口に看板が見えるはずだ。
因みに、マリアが屋敷から行くときは、駅とは反対の住宅街側の入口から
入ることになる。

「今日は裏道から行こうかな……」
商店街の一本裏には、それと平行する裏道がある。マリアはその道に入る
と、商店街の半分程の細い道を歩き始めた。
暫くいくと、フランス映画などの単館上映専門の小さな映画館『夢の森シ
ネマ』がある。
「なになに、今やっててるのは、『シモーヌのマドレーヌ』と『フィナン
シェは恋泥棒』、 "お菓子にまつわるラブストーリー2本立て" か。そう
言えばこの映画館、昔最終上映で響子と……。うっふふ」

そしてその近くには、『黒百合書房』がある。
そこは一言で言うなら、 "昭和を色濃く残す古本屋" といった佇まいで、
店内は天井まである本棚に本がギッシリと積まれ、その中を歩くのは、ま
るで本の森に迷い込んだような気になる。
そんな森の一番奥にはレジがあり、そこには一人の熟女が座っている。
優しい眼差しはどこか妖艶で、蕩けるような笑みはどこか妖しげだ。
「いるかなぁ~、モナリザさん」
マリアはその前を歩きながらコッソリ奥を覗き込んだ。
「あっ、いたいた。裏道のモナリザ……。あの妖しさ、どこか惹かれるん
だよなぁ~。あんな人に縛られて、あ~んなコトやこーんなコト……。あ
ぁん、もうあたし何考えてるんだろう」
マリアは足早にそこを立ち去った。
「でもやっぱり、いつかナニかありそうな気がする」
そんな想いを振り払い、マリアは裏道から商店街へと戻り、アマデウスの
前まで来た。ドアを開いて中に入ると店内は一杯で、一番奥のテーブルだ
けが空いていた。

マリアがテーブルに付くと、親友の『響子』が水の入ったコップを片手に
注文を取りに来た。
「マぁ~リア。久しぶり……。ママが厨房で待ってるよ」
「うん、チョット挨拶してくる」
マリアは響子と一緒に、厨房へと向かった。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土