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裏道のモナリザ



  裏道のモナリザ
ー夢の森商店街 黒百合書房ー


PROLOGUE
『夢の森女子学園大学付属女子高等学校』は通称『夢高』と呼ばれている。
この学園へは、『夢の森駅』の西口のバスターミナルから『夢高』行きの
バスで30分揺られなければならない。
今その夢高から、『夢の森駅 西口』行きのバスが帰ってきた。
師走のこの時間、夢高の国語教師『大崎 恵』がこのバスから降りた時、
辺りはもうすっかり日が暮れていた。

いつもならここから西口に向かう恵だが、この日は違っていた。
彼女は駅とは反対の幹線道路へと、バスターミナルを迂回するように歩き
始めた。
幹線道路を渡る横断歩道からは、『夢の森商店街』の入り口が見える。
恵がよく行く『カフェ・アマデウス』の看板にも、明かりが灯っている。
恵は商店街に入ると、それと並行する裏道へと入った。
裏道には、フランス映画などの単館上映専門の『夢の森シネマ』があるく
らいで、他には書店が一軒あるくらいだ。
その書店が、恵の目指す『黒百合書房』だった。




夢の森シネマも昭和を感じさせる映画館だが、黒百合書房もまた昭和の香
りを色濃く残した、古本屋を思わせる佇まいだった。
店内には本棚で仕切られた狭い3本の通路があるが、その本棚はもちろん
両側の壁も、全て床から天井まで本で埋まっている。
だからその通路を歩く時は、まるで本の森の中を歩くような気分になる。
そんな森の一番奥にはレジがあり、そこには1人の熟女が座っていた。
年の頃は四十代後半だろうか。その優しい眼差しはどこか妖艶で、蕩ける
ような微笑みはどこか妖しげだ。
そんな微笑みを浮かべた彼女は、知る人ぞ知る『裏道のモナリザ』と呼ば
れていた。

恵は辺りを窺うと、この書店に少し早足に入った。
何故そうしたのか。それはこの書店がR18指定となる、成人図書を多く扱
っている書店だからだった。


あたしがこの本屋に来るようになって、もう半年は経つだろうか。
目的はもちろんエロ本だ。裏道にあるこの店は人目につかず入りやすく、
しかも滅多に客はいない。
ただ目的の本は、おそらく立ち読み防止のためだと思われるが、レジ近く
に集中している。ましてや女のあたしが、あのモナリザの前でエロ本を
堂々と読めるはずもなかった。本来ならば……。
しかしあたしは知っている。エロ本が読める究極の居場所を……。

それは本棚で仕切られた3本の通路の壁側の一番奥。モナリザのいるレジ
から見ると右側になるが、そこだけが1メートルほどコの字型に凹んでい
る。つまり右側の通路だけはL字型になっている訳だ。ちなみにあたしは
その小さな窪みを、 "ポケット" と呼んでいる。
このポケットでエロ本が読めれば……。5分いや10分程でもいい。
あのモナリザに背を向け、エロ本を隠しながらこっそりと読めるのに。

コの字型に凹んだポケットの三面も当然本で埋め尽くされている。
しかもポケットは実用書のスペースでエロ本はない。
だがそんなある日、誰が置いたのか、あたしはポケットに一冊のエロ本を
見つけたのだ。それはちょうど胸の高さ、実用書の背表紙に完全に紛れて
はいたが、1度目に付けば確かに違和感のある背表紙で、あたしには何故
かその背表紙だけが光って見えた。
しかもそれは、とあるSM雑誌の最新号で、あたしが前々から気になって
いた雑誌だ。この雑誌は月刊誌で、毎号必ずレズSMの小説が掲載されて
いる。
あたしはポケットに入ると、何気なくモナリザに背を向けた。そしてさも
目的の本を探すフリをしながら、あたしはそのエロ本へと手を伸ばした。
後ろでモナリザが見ていると思うと胸が高鳴る。
しかし今は、この本を本棚から引き出しても、モナリザからはあたしの背
中で見えないはずだ……。


そのSM雑誌は少し厚めで、ズッシリとした重さがあった。
一度開いてしまえば中は小説中心で、写真などは巻頭に数ページあるだけ
だ。小説に沿った挿絵が書かれているページはあるが、後は全て活字で埋め
尽くされている。

あたしはドキドキとした胸の高鳴りを、そして背中にモナリザの妖艶な視
線を感じながら、その雑誌を開いた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土