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あなたの燃える手で

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緋色の奥義

其の二
艶魔衆頭領『無空』の命を受た『椿』『桔梗』『お蘭』の三人と、淫靡衆頭
領『幻空』の命を受た『烏』『百舌』『梟』の三人が、西方ガンダーラより
伝わりし性の奥義書、『ラーマ・カイラ』を持った一行に追いついたのは、
江ノ島の手前、時刻は空が茜色に染まりかけた頃だった。

「いたぞ、もう江ノ島まで……」
はるか前方に書物を持った一行を捉えた三人は、一番の若手である椿の言葉
に一度歩みを緩めた。一行は男三人。目立たない格好をしている。
「でも艶魔谷を発ってまだ一日半。ここで追いついたは僥倖。そうでしう? 
お蘭姉さん」
そう言って三十路の桔梗は、隣を歩く四十路のお蘭を見た。
「もう、その姉さんおやめって言ったろう、桔梗」
「ここまでくればもう大丈夫。後はあたしが獲ってくるよ」
「大丈夫かい? 椿。あんた一人で……」
お蘭は心配そうに最年少、二十歳代の椿を見た。
「大丈夫。淫靡衆が追いつかないうちに、さっさと片付けてくるよ」
「椿ちゃんったら、相変わらずの鉄砲玉」
「本当だよ。何でもかんでもすぐ突っ走って」
「善は急げって言うでしょう。お蘭さんも椿さんも、先に鎌倉へ」
「それじゃ明日、由比ヶ浜で待ってるよ。椿」
「なんだか心配だねぇ。無理しないで夜になってからにおし……」
「はい、そのつもりです」
その言葉を最後に、椿は風のように前方へと走り去った。

ここまで波打ち際を走ってきた淫靡衆の三人は、街道を行く奥義書を運ぶ一
行を見つけた。
「ふうぅ、どうにか追いついたみたい。疲れたぁ。それにしても男三人だけ
とはねぇ……」
「疲れたって、一番若いあんたがなに言ってるの烏。あんたまだ二十歳過ぎ
たばっかりじゃなかったっけ……」
「そうだけど、百舌さんだって三十路の体力じゃないよ。それに見た目だっ
て相当若いし」
「烏、百舌。二人とも、もう少し距離を縮めておくよ」
「えっ? まだ走るのぉ? 梟さん」
「結局、四十路の梟さんが一番若いみたい……」
「ほらっ、減らず口叩いてないで、行くよ」
三人は、砂浜に足跡もつけずに走り去った。

それから程なくして陽は沈み、江ノ島は漆黒の闇に包まれた。。青黒い虚空
には満月が輝き、月光は一条の光の道となって海面に反射している。
奥義書を持った一行は、引き潮のタイミングで江ノ島に渡り、その日の宿を
とった。

一方淫靡衆の三人は、江ノ島へ渡る道を閉ざした満ち潮を見つめていた。
「潮が満ちると渡れなくなるわけか……」
「考えたねぇ、誰が狙ってるかわからない奥義書だからねぇ。用心に越した
ことはないよ」
「でもそれくらいじゃあ……、あたしはちょっと退屈かな」
「そうだね烏。あんたなら……」
「うん。ちょっと行ってくるよ。明日鎌倉で待ってて」
「わかったよ、それじゃ明日、材木座海岸でね」
烏はニッコリと笑うと、沈みもせずに海面を歩いて江ノ島へと渡った。
その頃、すでに江ノ島に上陸していた閻魔衆の椿は、奥義書の一行の宿の壁
を、音も立てずに飛び越え庭に降り立った。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土