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緋色の奥義



緋色の奥義


ー序章ー
長く続いた戦国の世、それも天下分け目の戦を持ってその勝敗を決しようと
していた。
東西いずれかの国の命を受け、時代の裏で暗躍したきた忍び達も、やがてそ
の役目を終えようとしていた頃、どこにも属さぬ二つの忍びの衆があった。
一つは艶魔(えんま)流忍術を駆使する一団、『艶魔衆』。
そしてもう一つは、淫靡流忍術を駆使する『淫靡衆』だった。

なぜこの二つの忍び衆がどこの国にも属さなかったのか、それは全員が女忍
の "くノ一" であること。そしてその目的は、忍術による最高の快楽を追求
することにあったからだ。しかも彼女らは射精で終わる男の快楽ではなく、
終わりのない女の悦楽こそが極めるべき道としていた。その為、男は種付け
だけに使われると、後は始末されていたのだ。

そして昨今、密かに西方ガンダーラより最古の性典書『ラーマ・カイラ』が
渡来した。古来より伝わりし性の奥義が書かれたこの書物を奪うべく、二つ
の流派の暗躍が始まった。



其の一
艶魔衆の住む艶魔谷。その際奥部に建つ艶魔堂。そこに三人のくノ一が呼ば
れた。彼女らを呼びつけたのは他でもない艶魔衆頭領『無空』だった。
いったい何年生きているのか、その年齢は誰も知らない。六十歳にも見えれ
ば八十歳にも見える。その髪は艶々と黒く輝き、肌も皺らしい皺はほとんど
見えない。しかし百年以上も昔のことをまるで見たきたように話すのだ。
四十五十になったくノ一達が、幼い頃から彼女はこの身なりのまま変わらず
にいるのだった。

三人のくノ一達は、艶魔堂の床に片膝を立てて控えていた。
「無空様、『椿』ただいま参りました」
「『桔梗』参上仕りました」
「『お蘭』はここに……」
齢百を超えていてもおかしくない無空は、爛々と輝く二つの瞳で、頭を垂れ
る三人を見下ろした。
「うぬらを呼んだは他でもない。ラーマ・カイラの件はもう知っておろう」
「はい。なんでも西方より伝わりし、性の経典とか」
「そこには古来ガンダーラの性の奥義が書かれているとも、聞き及んでおり
ます」
「無空様、そのガンダーラの奥義書を我ら三人で……」
「いかにも……。我ら艶魔流は快楽を罪とする。もしこの経典に書かれてい
る奥義が、民の広く知るところとなれば何とする。民は快楽に溺れ働かず、
堕落の限りを尽くし、やがてこの国は滅びよう」
「いかにも……」
「そうならぬうちに我ら艶魔衆でこれを奪い、永遠に封印するのじゃ」
「はっ」
無空を見上げていた三人は、改めて頭を垂れた。
「おそらく、時を同じくして淫靡流の者共も動き出すじゃろう。しかしうぬ
らの忍術体術をもってすれば必ずや奪えよう」
「ありがたきお言葉にござりまする」
「聞けば書物を持った一行は、明日には小田原入りすると聞いておる。さす
れば翌日には鎌倉に運ばれよう。鎌倉に入っては監視も厳しくなる」
「ならばその前に……」
「そうじゃ。行け、椿、桔梗、お蘭。この奥義書を奪うのじゃ」
無空がそう言い終わらないうちに、三人の姿はその場から掻き消えていた。


淫靡衆の住む淫靡谷。その最奥部に建つ淫靡楼に、三人のくノ一が呼ばれ
た。呼びつけたのは他でもない、淫靡衆頭領『幻空』だ。
彼女の年齢は誰も知らない。その姿は六十歳にも八十歳にも見え、髪は艶々
と輝き、肌も皺らしい皺はほとんどない。しかし百年以上も昔のことを見た
きたように話す。全てのくノ一が幼い頃から、彼女の姿はこのままなのだ。

三人のくノ一達は、淫靡楼の床に片膝を立てて控えていた。
「幻空様、『烏』ただいま参りました」
「『百舌』参上仕りました」
「『梟』はここに……」
齢百を超えていてるであろう無空は、爛々と輝く二つの瞳で、頭を垂れる三
人のくノ一を見下ろした。
「うぬらを呼んだは他でもない。ラーマ・カイラの件はもう知っておるな」
「西方ガンダーラより伝わりし、性の奥義書と聞いておりまする」
「そのラーマ・カイラ。汝ら三人で奪って欲しい……」
「奪う……?」
「そうじゃ。我ら淫靡流は快楽を友とする。この経典を正しく世に広め、民
に快楽があってこそ本当の人の和合があると理解させねばならぬ。それ叶わ
ずば、民は永遠に快楽に翻弄され堕落し、やがてこの国は滅びよう」
「いかにも……」
無空を見上げていた三人は、改めて頭を垂れた。
「そうならぬうちに、我らでこの経典を奪うのじゃ」
「はっ」
「おそらく艶魔流も動くじゃろう。経典は明日小田原に入り、その後鎌倉八
幡宮に運ばれる。鎌倉に入っては監視も厳しくなる。そうなっては面倒」
「ならばその前に……」
「そうじゃ。行け、烏、百舌、梟。この性の奥義書を奪うのじゃ」
幻空がそう言い終わらないうちに、三人の姿はその場から掻き消えていた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土