2ntブログ

あなたの燃える手で

Welcome to my blog

深夜バス


「いいわねぇ、結衣ちゃん若くて。羨ましいわ。あたしは39。来年の夏には
もう四十路になるの」
「そうなんですか? 全然見えませんけど。あたしより2つか3つ上かと思い
ました」
「まぁ、ありがとう」
みどりさんがあたしを見つめた。lそれは熱く、ねっとりと絡みつくような視
線で、あたしはそれがどういう人の持っている視線かを知っていた。
それはあたしと同じ、女を愛する女が持つ視線だ。
「えっ……。みどり……、さん」
「いいのよ。分かるわ、あたしもそう。だから分かるの、あなたもあたしと同
じだって。そうなんでしょう?」
もう説明も確認もいらなかった。だってあたしには、その意味が分かりすぎる
くらい分かるのだから。
だからあたしの答えは
「はい……」
だった。
「やっぱり……。一目見た時からそうだと思っていたの。だからあなたの反対
側のあの席に座って……」
「そうだったんですか……」
みどりさんは黙って頷いた。
「こっち向いて」
みどりさんの顔も少し赤くなっている。そんな彼女の顔がk、あたしにグッと
近づいた。

あたしは反射的に車内を見回した。見回すといっても、前後を2つのシートに
挟まれているため、大して見えるわけではない。
最終的にこのバスに乗った乗客は10人ほどだろうか。幸いそのすべての人が
この席よりも前に乗っている。彼女たちが後ろを振り返っても、シートの陰に
なっているあたしたちが見えることはないだろう。でも音は要注意だ。多少の
音は走行音にまぎれるとしても、会話も声をひそめないと聞こえている可能性
がある。だから声も相当押し殺すことになり、まるで内緒話でもをしているよ
うな会話になる。

「ねぇ、キスする?」
「えっ?」
「キスよ。キ・ス……」
「えっ、あっ、は、はい……」
「うふふっ。じゃ、もっとこっち向いて」
あたしはズリズリとお尻をずらし、体ごとみどりさんの方に向いた。
するとみどりさんはあたしの頬を両手で挟んだ。
「可愛いわね、結衣ちゃん」
「みどりさんだって、綺麗です……」
「可愛い唇。食べてもいい?」
あたしは黙ってうなづいた。するとみどりさんの顔があたしに近づいて、その
柔らかな唇があたしの唇に触れた。
フレンチキスというやつだ。
もっと情熱的なキスを想像していたあたしは、ちょっと拍子抜けした。でもそ
れはあたしが勝手に想像していただけで……。
しかし、次にみどりさんが口にした言葉は、あたしの想像を超えていた。
「結衣。もうあなたはバスを降りるまであたしのものよ。いいわね」
「は、はい……」
その有無を言わさぬような妖艶な瞳に、あたしは迷わず答えていた。
そしてこの返事で、二人の主従関係が出来上がったのだ。いや、もしかしたら
それは、出会った瞬間から出来ていたのかもしれない。

Comments 0

Leave a reply

About this site
女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
About me
誠に恐縮ですが、不適切と思われるコメント・トラックバック、または商業サイトは、削除させていただくことがあります。

更新日:日・水・土