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あなたの燃える手で

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深夜バス


三角形に並んだ3つ赤いバラ。それがLOVE ROSES のラベルだ。
彼女の持った小瓶がそれに間違いことは、通路を挟んだここからもハッキリと
わかる。
それにしてもまさか同じバーボンを……。あたしはちょっと驚いた。
「うふふっ、偶然ね……」
「はい……」
そう答えるのがやっとだった。だってタイプの人から話し掛けられて、あたし
はちょっとドギマギしていたのだ。
「お酒はよく飲むの?」
ちょっと上から目線。でもあたしにはそれが堪らない。
「えぇたまに。でも普段はあまり。今日はよく眠れるようにって、一応……」
「なるほど。あたしはよく飲むわ。中でもこのLOVE ROSES一番好き。飲む
時はいつもこれなの」
「そうなんですか。あたしもこのバーボン好きです」
「そう、気が合いそうね。あたしたち」
「えっ……?」
そして彼女は、畳み掛けるようにこう言ったのだ。
「ねぇ、そっちに行ってもいい? 一緒に飲みましょう」
「えっ、あっ、はい。どうぞ」
突然の申し出に、あたしはまたドギマギしてしまった。
そんなあたしをよそに、もう彼女は立ち上がっている。
あたしは急いで隣に置いたコートを膝に置き、彼女のために席をつくった。
すると彼女がタイミングよく隣へと腰掛けた。
「うふふっ、お邪魔しまぁ~す。あっ、コート、こっちに置いとくわね」
彼女は通路を挟んだ自分の席へ、あたしのコートを投げ入れるように置いた。
「あっ、すみません」
「いいのよ。とりあえず乾杯しま……、あっ、まだ名前言ってなかったわね」
「あっ、そうですね……」
同じお酒を見せられて、なんとなく忘れていた。
「あたしは藤原みどり。よろしくね」
「牧田結衣です」
「まぁ、結衣っていうの……。かわいい名前ね。ねぇ、結衣ちゃんって呼んで
もいい?」
「えぇ、もちろんです。普段からそう呼ばれてますし……」
そんな会話をしながら、あたしたちは小瓶の蓋を外した。
「じゃあ結衣ちゃん」
みどりさんはそう言うと、乾杯を促すように小瓶を顔の高さに持ち上げた。
あたしも同じように小瓶を持ち上げる。
「二人の出会いに……、乾杯」
「乾杯」
あたしたちは控えめに瓶を合わせた。そっとキスをするように触れ合った小瓶
は、二人の耳にだけ届く "カチン" という硬質な音を立てた。
お互い当然コップの用意などない。だから自然ラッパ飲みになる。
小瓶に入ったバーボンは180ml。一合だ。とりあえず乾杯はしたものの、どん
なペースで飲んだらいいのか、ちょっと迷う。
あたしはすぐに顔に出るタイプだ。バスの暖房も手伝って、早くも赤くなった
らしい。
「あらっ、結衣ちゃん少し赤くなってわよ。もぉ酔っちゃったの?」
「いえっ、そんな……、まだ……」
「ねぇ、もしかして緊張してる?」
「いえっ……」
正直、緊張していないと言えば嘘になる。みどりさんがいくらタイプだとはい
え、今知り合ったばかりなのだ。
「いいのよ無理しないで。しょうがないわよ。ねぇ、結衣ちゃん今幾つ?」
「33です」
「まぁ、若いのねぇ」
そう言ったみどりさんの目は、妖しく輝いていた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土