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あなたの燃える手で

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8月のマリオネット


ー2014 夏休みスペシャルー



8月のマリオネット



PROLOGUE
「ただいま帰りましたぁ~。麗子様ぁ」
マリアは買い物から戻ると、外の熱気を断ち切るように玄関を閉めた。
片手にはスナック菓子がイッパイに入ったコンビニのビニールが、もう片手に
は葉書が1枚握られている。
「おかえりなさい、マリア」
「はい、ただいまです。麗子様。あのぅ、暑中見舞いが来てますよぉ」
「まぁ、誰から?」
マリアは葉書を裏返した。
「お姉様の、仁美様からです」
「えっ? 仁美お姉様が暑中見舞い? 何かしら? いつもこんなモノ出した
コトない人なのに……」
マリアは黙って首を傾げた。だが麗子の疑問はスグに解けた。
「マリア、新しいペンションが完成したから、2人で来ないかですって……」
「仁美様の新しいペンションが……」
「ペンション・マリリン。オープンは8月17日ですって。どうする?」
「どうするって……、言われてもぉ……」
「8月17日は、あたしはチョット無理だけど……」
「えっ? 麗子様、何かご予定が?」
「その日は全国の支店長会議と、懇親会を兼ねた暑気払いがあるのよ」
「そうなんですか、それじゃ、あたしも……」
「マリア、あなた1人でいってらっしゃい」
「えっ? あたし1人で、ですか……?」
「夏休みよ。ゆっくりしてらっしゃい。いつも頑張ってくれてるんだから」 
「でもぉ~」
「いいから、いいから。お姉様にはあたしから話し通しておくから、ねっ」
「は、はぁ……はい、それじゃ、お言葉に甘えて……」

マリアは降って湧いたような夏休みに驚き、また内心喜々とした興奮を隠せな
かった。
その夜、マリアは自室に戻ると旅行の仕度を始めた。




8月17日、午後。マリアの姿は、ある地方都市にあった。

最寄りの駅からタクシーを拾い10分程走ると、車は白樺の林を抜け、続いて
深緑の森へと入り込んだ。木漏れ日を浴びながら更に10分、前方に青空を映
す鏡のような湖が現れ、それが突然の森の終わりを告げた。
遠くに青き山脈を眺め、緑の森を背景に湖を眺める薄桃色のペンション。それ
が『ペンション・マリリン』だった。
そしてこのマリリンが、仁美の経営する2つ目のペンションで、今回マリア達
が招待されたペンションだ。
2つ目というのは、仁美は今まで『オスカル』というペンションを経営してい
たからだ。今は旧館となったオスカルは、間取りや部屋数も多く、どちらかと
いうと家族向け。
そしてオスカルの近くに完成したマリリンは、オスカルと比べるとやや小さ
く、こちらはより女性らしさを強調した造りとなっている。
二つのペンションはその特徴を表すように、オスカルは薄い水色。マリリンは
薄桃色に塗られていた。


「はぁー、やっぱり空気が美味しいなぁー、都会とは比べものにならないや」
マリリンの前でタクシーを降りると、マリアは大きく深呼吸をした。
湖へと吹き流れる涼風が、マリアの髪を優しく撫でると、湖面にそっと波紋を
刻んだ。
「へぇー、大きい湖。山中湖くらいはあるかなぁ」
マリアは湖を眺めながら、ペンションへの入口へと向かった。薄桃色の壁が緑
の森によくマッチしている。2階部分の半分は木漏れ日を浴び、薄桃色に細か
な明暗が付いている。
教会を思わせる重厚な正面の扉は、マリアの力でも軽く開き、中に入ると涼し
い空気がマリアを包み囲んだ。
扉を開けると奥で分かるのだろうか、すぐに麗子の1つ上の姉『仁美』が小走
りでやって来た。
「いらっしゃい、マリアちゃん」
「あっ、仁美様。お久しぶりです。いつも麗子様が……」
「もう、いいのよそんな硬い挨拶。それより暑かったでしょう。何か冷たいも
のでも飲む?」
「はい。でもとりあえず荷物を……」
「そうね、それじゃお部屋へ案内するわ。こっちよ」
仁美はマリアを案内するように歩き出した。

『氷見川仁美』。もう言うまでもなく、氷見川麗子の1つ上の姉だ。
世界展開するエステ業界最大手、「ブルームーン」の社長を務める妹の麗子は
仕事柄あの街を離れることはなかなか出来ない。しかし都会暮らしが性に合わ
ない仁美は、街の喧騒を離れ、避暑地で有名なこの土地でペンション経営を始
めた。それが思いの外羽振りが良く、10年を待たずに2件目のペンション
『マリリン』のオープンの運びとなった。
身長は麗子よりやや高く、バストとヒップは麗子より僅かに大きいが、ウエス
トは細い。その為か麗子と比べれば、全体的に引き締まった印象を持つ。
マリアのことは昔から知っており、彼女を可愛がりたくてしょうがない仁美
は、いつもその機会を狙っている。しかし場所が場所だけに滅多に逢うことは
出来ない。
今回麗子が来なかったのも、そんな姉を思ってマリアと2人きりの時間を作っ
て上げたかったのかも……、そしてそれが新ペンション完成の、麗子からのプ
レゼントだったのかもしれない。
そして彼女がずっと独身な理由は、もう言うまでもない。

ストレートの黒髪を白い首元で揺らしながら、形のいい脚がトントンと階段を
上がっていく。
仁美は2階に上がると、1番奥の部屋のドアを開けた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土