怪盗ムーンライト
39
「類は友を呼ぶってわけね……。まさか美術館に潜入がいたとはね」
2人の関係までも見破られた小夜と円香は、ズルズルと車へと近づいた。
「動かないで」
奈緒子の拳銃はピタリと2人を捉えている。
「あなた達を撃ちたくはない。分かるでしょう」
「……わかったわ」
奈緒子は拳銃を向けたまま2人に近づくと、手錠を出した。
「詳しいことは署で聞くわ」
それは奈緒子が左手で円香の右手首を握り、右手で手錠を掛けようとしたとき
だった。円香の右手首がクルリと返り、奈緒子の左手首を握った。
続けざまに左手で円香の手錠を持った右手を封じた。
するとなんと円香は、奈緒子の両手を持ったまま右足を横へと振り上げた。
膝を伸ばしたままの右脚は、弧を描いて奈緒子の左側頭部に命中し、奈緒子の
頭から意識を弾き飛ばした。
強力な打撃を受けた奈緒子は、両手を掴まれたままズルズルと円香の前に崩れ
落ちた。おそらく自分になにが起きたか分からないまま。
数十分後、奈緒子は路肩に寄せられたバイクの陰で気が付いた。まだ夜は明け
ていなかった。
その日行われるはずだった『ルパンの宝石展3』は、当然中止となった。
「 "ムーンライトには影が2つある" まさかあんな若い子だったなんて」
「大丈夫なの? 奈緒子……」
運ばれた病院のベッドの傍らに、晶が立っていた。
「えぇ、もう何ともないわ。でも自分が何をされてこうなったか分からない
の。とにかく突然頭に衝撃を受けて……。気が付いたらこのベッドの上」
「いいところまで追い詰めたのに、本当に残念ね」
「えぇ、ムーンライトはジェシカ・アンダーソンに変装したままで、素顔も分
からずじまい。あの若い相棒の名前も分からないし、『クラリスの首飾り』は
まんまと盗まれて……。結局こっちの完敗ね」
「でもその程度でよかったわ。拳銃も盗られなかったし」
「本当はこんな事したくなかったんじゃないかしら。あたしに拳銃を向けられ
たから、緊急的な処置だったのかもしれないわ」
「もう……、ムーンライト様様ね」
「うふふっ、あはは……」
2人は自然と笑顔になり、ワケも分からず笑い合った。
「ヒロミもカンナも、奈緒子はあの美術館の職員だと今でも思ってるわ」
「そう、そうよね」
「ちょっと後ろめたいけどしょうがないわ。でもいつか絶対、月光のヤツを逮
捕してやりましょう。ねっ、奈緒子……」
「でもあたしはムーンライトに面が割れた。もう潜入としては難しいかもね。
もっともそれを知ってるのは、上の人間のごく一部とムーンライト、それに竜
胆晶だけだけどね」
「ねぇ、そういえば、『アルセーヌの瞳』の謎解き、まだ聞いてないわ」
「あぁ、そうだったわね。あれもジェシカがムーンライトならば可能なのよ」
「やっぱりぃ……?」
竜胆は話し出した奈緒子の話に耳を傾けた。
「類は友を呼ぶってわけね……。まさか美術館に潜入がいたとはね」
2人の関係までも見破られた小夜と円香は、ズルズルと車へと近づいた。
「動かないで」
奈緒子の拳銃はピタリと2人を捉えている。
「あなた達を撃ちたくはない。分かるでしょう」
「……わかったわ」
奈緒子は拳銃を向けたまま2人に近づくと、手錠を出した。
「詳しいことは署で聞くわ」
それは奈緒子が左手で円香の右手首を握り、右手で手錠を掛けようとしたとき
だった。円香の右手首がクルリと返り、奈緒子の左手首を握った。
続けざまに左手で円香の手錠を持った右手を封じた。
するとなんと円香は、奈緒子の両手を持ったまま右足を横へと振り上げた。
膝を伸ばしたままの右脚は、弧を描いて奈緒子の左側頭部に命中し、奈緒子の
頭から意識を弾き飛ばした。
強力な打撃を受けた奈緒子は、両手を掴まれたままズルズルと円香の前に崩れ
落ちた。おそらく自分になにが起きたか分からないまま。
数十分後、奈緒子は路肩に寄せられたバイクの陰で気が付いた。まだ夜は明け
ていなかった。
その日行われるはずだった『ルパンの宝石展3』は、当然中止となった。
「 "ムーンライトには影が2つある" まさかあんな若い子だったなんて」
「大丈夫なの? 奈緒子……」
運ばれた病院のベッドの傍らに、晶が立っていた。
「えぇ、もう何ともないわ。でも自分が何をされてこうなったか分からない
の。とにかく突然頭に衝撃を受けて……。気が付いたらこのベッドの上」
「いいところまで追い詰めたのに、本当に残念ね」
「えぇ、ムーンライトはジェシカ・アンダーソンに変装したままで、素顔も分
からずじまい。あの若い相棒の名前も分からないし、『クラリスの首飾り』は
まんまと盗まれて……。結局こっちの完敗ね」
「でもその程度でよかったわ。拳銃も盗られなかったし」
「本当はこんな事したくなかったんじゃないかしら。あたしに拳銃を向けられ
たから、緊急的な処置だったのかもしれないわ」
「もう……、ムーンライト様様ね」
「うふふっ、あはは……」
2人は自然と笑顔になり、ワケも分からず笑い合った。
「ヒロミもカンナも、奈緒子はあの美術館の職員だと今でも思ってるわ」
「そう、そうよね」
「ちょっと後ろめたいけどしょうがないわ。でもいつか絶対、月光のヤツを逮
捕してやりましょう。ねっ、奈緒子……」
「でもあたしはムーンライトに面が割れた。もう潜入としては難しいかもね。
もっともそれを知ってるのは、上の人間のごく一部とムーンライト、それに竜
胆晶だけだけどね」
「ねぇ、そういえば、『アルセーヌの瞳』の謎解き、まだ聞いてないわ」
「あぁ、そうだったわね。あれもジェシカがムーンライトならば可能なのよ」
「やっぱりぃ……?」
竜胆は話し出した奈緒子の話に耳を傾けた。