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あなたの燃える手で

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怪盗ムーンライト

36
「竜胆さん、大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。撃たれたワケではないらしい。ジェシカは……」
「ジェシカさんも撃たれてはいないようです」
カンナの腕の中で、ジェシカも目覚めようとしていた。
「あっ、ジェシカさん……、大丈夫ですか?」
「まったく、今夜はなんて刺激的な夜なんだ」
ジェシカが竜胆に目をやると、2人はホッしたように息をついた。
「一体なんだったんだあの衝撃は……」
竜胆は腰に手を当てながら立ち上がった。
「多分、電流……」
ジェシカも起ち上がろうとしていた。そんなジェシカにカンナが肩を貸した。
「電流? スタンガン……ですか?」
「おそらくテーザー銃だろう」
「テーザー銃って、アメリカで使ってる……、あれですか……?」
「そう、あれだ」
ジェシカはカンナのそんな言い方にニコリとすると、言葉を続けた。
「スタンガンの一種だが見た目は銃のそれだ。大きな違いは数メートルのワイ
ヤーの付いた電極を空気圧で射出するということだ。射出された電極は相手に
刺さり、本体で発生させた電流はワイヤーを伝って相手に流れる」
「それじゃ2人はそのショックで……」
カンナは心配そうな顔で2人を見た。
「あぁ、そういうことだな」
「じゃ、あの窓のワイヤーは……」
「テーザー銃で森に向かってワイヤーを張った。おそらく射程距離ギリギリだ
ろうが」
そう答えたのはジェシカだった。
「張ったワイヤーに首飾りを掛け、そのまま森に向かって滑らせる。ここは3
階だからな、おそらくかなりのスピードで滑ったろう。今回展示室をここに変
えたのが、ヤツらには幸いしたわけだ」
「でも、でもですよ」
カンナは首をかしげたまま腕を組んだ。
「首飾りはそうやって消えたとして、竜胆さんとジェシカさんは誰が撃ったん
です?」
「確かに、撃ったのがムーンライトだとして、一体どこにいたんでしょう」
ヒロミもカンナの疑問に同意したようだ。
「今回は月光が変装して紛れ込むことが出来ないように、人数を極端に絞っ
た。館内にいるのは警察の人間がここにいる4人と、館長室にいる制服。そし
て美術館側の人間は館長の赤水七美と職員の中野奈緒子の2人だけ」
そこからカンナが話を続けた。
「そして館長室で破裂音がして……、あっ、あの音は爆竹でした。時限発火装
置で導火線に火を点けたようです。そしてあたしとヒロミさんと制服が、館長
室に向かった……。そしてあたし達が館長室にいる時に、ここで銃声、実際に
はテーザー銃だったわけですけど、その発射音がした。それで駆けつけると竜
胆さんとジェシカさんが倒れていて、窓からは森にワイヤーが張られていた」
「そしてムーンライトもこの窓から……」
そう言ったジェシカの後を続けるものは誰もなく、暫しの沈黙が流れた。
そんな時、展示室に制服警官は走り込んできた。
「竜胆さん、中野美奈子が姿を消しました」
「なに?」
「はい、わたしが館長と話している間に。気が付いたときにはもう……」
カンナはその時一緒にいたヒロミを見た。
「ヒロミさん、まさか彼女が……」
「でも銃声がしたとき、彼女は確かに館長室にいた。その彼女がテーザー銃を
撃つ事は出来ないわ」
謎は謎を呼び、また部屋に沈黙が流れた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土