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あなたの燃える手で

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怪盗ムーンライト

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「竜胆さん、七海美術館にムーランライトからの予告状が届いたそうです」
カンナの後ろにあるFAXが、それを吐き出し始めた。
「これです……」
カンナがFAXを竜胆に渡すと、隣にいたジェシカ・アンダーソンもカンナと
一緒にそれを覗き込んだ。
「いつもと一緒だ。月光のヤツに間違いないな」
「そうですね。この文面を知っているのは、警察関係者とムーンライト本人だ
けですから」
「サンドメノショウジキ。と日本では言うのですか」
「そうだな、本当に3度目の正直だ。こんどこそ必ずヤツを逮捕する」
「そうですよ竜胆さん、今度こそ……」
カンナは両手でガッツポーズを作った。
「それにジェシカさんも」
「そうだな……、今度こそ逮捕しよう」
ジェシカはカンナのマネをするように、彼女に向かってポーズをした。


犯行予告当日。今回は場所を3階の展示室に移した。
『クラリスの首飾り』の展示、つまり『ルパンの宝石展 Ⅲ』は明日15日から
始まる。当日は通常の大展示室に置かれるが、予告状に示された犯行日と時刻
はその前日だ。しかも午後11時59分は当然閉館時間となっている。ならば通
常の大展示室に置くよりも、その4分の1ほどの広さしかない、この3階の展
示室に移した方がより警備しやすいだろうということになったのだ。
ちなみに3階には館長室もある。館長と職員の中野奈緒子は館長室にいる
が、部屋からは出ないように言ってある。

そして当日。時刻は犯行予告5分前になろうとしていた。
3階にいるのはジェシカと晶、カンナとヒロミ、そして制服警官が1人の計5
人だけだ。
この制服警官は体重が100キロ以上はある巨漢で、その体格はまるで関取のよ
うだ。しかもたった今、予告時間5分前に10人に候補の中から選んだ。
今までムーンライトは館内にいる誰かに変装している。しかしいかにムーンラ
イトでも、5分前にこんな体型に変装する時間も用意もないはずだ。
コレなら、この5人なら紛れることは出来ない。人数が5人なら1人でも増え
ればスグに気が付く。

「3分前になりました」
カンナが腕時計を見ながら言った。
竜胆は窓の外に目をやった。外は暗闇。ガラスには自分の姿が映っているが、
実際窓の向こうには小高い山があり、そこには雑木林が広がっている。
しかも美術館と雑木林の間には、片側1車線の道路が横断している。
「月光が来るとすればあの森から……? 森からこの窓までは10メートルも
ない。しかしここは3階だ。ムササビでもない限り飛び移れる距離ではない」
「ふっ、どうした竜胆」
「ジェシカ……」
竜胆は後ろのジェシカに振り返った。
「大丈夫、いくらヤツでもこの部屋に入らずに盗ることは出来ない。ヤツがど
こから来ようと、その時逮捕するだけだ」
「そうだな」
「そうです。6人目、6人目こそがムーンライト。国宝だろうと10円だろう
と、泥棒は泥棒です」
ヒロミは油断なく辺りを見回した。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土