2ntブログ

あなたの燃える手で

Welcome to my blog

怪盗ムーンライト

33
『アルセーヌの瞳盗難事件』から数週間が経ち、ここ七海美術館ではいよいよ
『ルパンの宝石展 Ⅲ』が開かれようとしていた。
展示物は『クレオパトラの首飾り』。金にダイヤ、ルビー、エメラルドなどを
散りばめた首飾りだ。

「館長! 館長……!」
「あらっ、おはよう奈緒子」
「あっ、お、おはようございます」
奈緒子は朝、ポストから回収した郵便物と新聞を胸に抱いたまま、ペコリと頭
を下げた。
「また、また予告状が……」
「そうね、もう驚かないわ。3回目の秘宝展も開かれるし。そろそろ来る頃だ
と思ってたわ」
「はぁ……」
「それで、またポストに入ってたのね?」
「はい」
奈緒子は黒文字で "予告状" と書かれた赤い洋封筒を七海に差し出した。
七海は見慣れた感のある封筒を開封し、中の三つ折りになった便箋を引っ張り
出すと、机に座ったままそれを読んだ。

>>>

Sat, June 14, 2013 PM 23:59

七海美術館 『ルパンの宝石展 Ⅲ』 に展示する、
至高のネックレス『クラリスの首飾り』 をいただきます。
なお当方に絶対の自信あり。十分な警戒をオススメする。

怪盗ムーンライト

>>>

「はいはい、いらっしゃいませ。ようこそ七海美術館へ」
「もう、館長……。取り敢えず警察に連絡しておきます」
「そうね、お願い。でも、また盗られちゃうんじゃないかしら」
「えっ……?」
「だって2戦2敗でしょう。警察もなんだかねぇ。頼りないって言うか」
「でもあたし達じゃどうしようないわけですし」
「そりゃあ、まぁ、そうなんだけどねぇ……」
警察へ連絡している奈緒子を見る七海の目は虚ろだった。
「連絡しておきました。すぐ来るそうです」
「そう……。奈緒子…」
「はい?」
「コーヒー入れてくれる? なんだか頭が痛いの……」
「だったら頭痛薬の方が……」
「いいのよ。ムーンライトが捕まるか、『クラリス首飾り』が盗まれれば、
きっとそれで諦めが付いて治ると思うわ」
「あぁ、なるほど……」
奈緒子にもそんな館長の気持ちが、なんとなく分かるような気がした。

Comments 0

Leave a reply

About this site
女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
About me
誠に恐縮ですが、不適切と思われるコメント・トラックバック、または商業サイトは、削除させていただくことがあります。

更新日:日・水・土