怪盗ムーンライト
3
何で漢字なんて書いて見せたんだろう。
しかも「円香」なんて。日本人でも読めない人がいるかも知れない。そんな漢
字なのに……。この子に分かるはずもない。聞く方が間違っている。
「ううん、いいの。あたしが言いたかったのは、円香って呼んでくれてもいい
よってこと」
「うふふっ、そう? アンナの方がいいんじゃない」
「あたしはアンナより円香の方が好きなの」
「何で?」
「さぁ、日本人の血かしら?」
「うふふっ、面白いのね。それじゃ円香って呼ばせて貰うわね」
「うん」
「ねぇ円香、どうしてあんな軽業師みたいなこと出来るの」
「あぁ、あれ。あれはウチはサーカス一座だったから。両親は演技中の事故で
死んじゃったんだけど」
「えっ、それじゃ、昼間のあのサーカスは……」
「そう、元はウチの一座よ。今じゃもう人手に渡ってるけど」
「それで、どうしてここに……?」
「えっ、それは、つまりその……、昼間のことがあったからさ、家に帰るわけ
にも行かないし、どうしよっかなぁって思ってたところに、たまたまこの店で
小夜を見つけたってわけ」
「なるほど……。で、どうするの?」
「うぅ~ん、取り敢えず今夜一晩だけでも」
「やっぱりね」
「バレてた?」
「バレてたわ」
そして小夜は自分の泊まるホテルに円香を連れて行った。
泥棒を働いた人間を泊める。それも初対面の人間を……。その理由の2つあ
る。その1つは小夜の性癖によるものだ。男を愛せない小夜にとって、円香は
垂涎の的だ。
そしてもう1つは、円香のあの人並み外れた身体能力だ。自分のパートナーに
なってくれれば心強いことこの上ない。
パートナーとは、怪盗ムーンライトの助手。という位置づけになるが……。
しかしこれを言い出すのは難しいだろう。きっとこの出会いはワンナイトラブ
で終わる。小夜はそう思っていた。
だから今夜はこの体を……。
円香は小夜と同じベッドに入った。
「いいの? 同じベッドで。あたしソファでもいいよ」
「何言ってるの、風邪引くわよ」
「うふっ、優しいね小夜」
円香が甘えるように小夜に近づいた。
小夜は彼女に手を伸ばすと、自分の方へ更に引き寄せた。
すると円香は、小夜にくっつくように身を寄せた。
「円香、あなた今夜ただで泊まるつもり?」
「ううん、そんなことないよ。ちゃんと払うよ」
「盗んだお金ね」
「ちがうよ。この体で払う……」
「まぁ、そんなこと言って、本気にしたらどうする気?」
「だって、小夜もそのほうがいいんでしょう」
「えっ……?」
小夜は一瞬言葉に詰まった。
「分かるんだ。あたしも小夜と一緒だから」
何で漢字なんて書いて見せたんだろう。
しかも「円香」なんて。日本人でも読めない人がいるかも知れない。そんな漢
字なのに……。この子に分かるはずもない。聞く方が間違っている。
「ううん、いいの。あたしが言いたかったのは、円香って呼んでくれてもいい
よってこと」
「うふふっ、そう? アンナの方がいいんじゃない」
「あたしはアンナより円香の方が好きなの」
「何で?」
「さぁ、日本人の血かしら?」
「うふふっ、面白いのね。それじゃ円香って呼ばせて貰うわね」
「うん」
「ねぇ円香、どうしてあんな軽業師みたいなこと出来るの」
「あぁ、あれ。あれはウチはサーカス一座だったから。両親は演技中の事故で
死んじゃったんだけど」
「えっ、それじゃ、昼間のあのサーカスは……」
「そう、元はウチの一座よ。今じゃもう人手に渡ってるけど」
「それで、どうしてここに……?」
「えっ、それは、つまりその……、昼間のことがあったからさ、家に帰るわけ
にも行かないし、どうしよっかなぁって思ってたところに、たまたまこの店で
小夜を見つけたってわけ」
「なるほど……。で、どうするの?」
「うぅ~ん、取り敢えず今夜一晩だけでも」
「やっぱりね」
「バレてた?」
「バレてたわ」
そして小夜は自分の泊まるホテルに円香を連れて行った。
泥棒を働いた人間を泊める。それも初対面の人間を……。その理由の2つあ
る。その1つは小夜の性癖によるものだ。男を愛せない小夜にとって、円香は
垂涎の的だ。
そしてもう1つは、円香のあの人並み外れた身体能力だ。自分のパートナーに
なってくれれば心強いことこの上ない。
パートナーとは、怪盗ムーンライトの助手。という位置づけになるが……。
しかしこれを言い出すのは難しいだろう。きっとこの出会いはワンナイトラブ
で終わる。小夜はそう思っていた。
だから今夜はこの体を……。
円香は小夜と同じベッドに入った。
「いいの? 同じベッドで。あたしソファでもいいよ」
「何言ってるの、風邪引くわよ」
「うふっ、優しいね小夜」
円香が甘えるように小夜に近づいた。
小夜は彼女に手を伸ばすと、自分の方へ更に引き寄せた。
すると円香は、小夜にくっつくように身を寄せた。
「円香、あなた今夜ただで泊まるつもり?」
「ううん、そんなことないよ。ちゃんと払うよ」
「盗んだお金ね」
「ちがうよ。この体で払う……」
「まぁ、そんなこと言って、本気にしたらどうする気?」
「だって、小夜もそのほうがいいんでしょう」
「えっ……?」
小夜は一瞬言葉に詰まった。
「分かるんだ。あたしも小夜と一緒だから」