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あなたの燃える手で

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死神イングリット

私は何もしない。ただ見ているだけ。
そう、全ての選択肢は、アナタにあるのだから……。



            死神イングリット




プロローグ
昨日までの初夏の陽気が、嘘のように寒い日だった。

その日、森山蘭は昼近くまでベッドの中で過ごしていた。
淀んだ空気に包まれたの蘭の部屋に、それを切り裂くように突然携帯が鳴った。虚ろな意識の中で惰眠を貪っていた蘭は、目を閉じたまま携帯に出た。
「はっ、はい、森山です」
「もしもし、夢の森書店ですが。ご注文の本が入荷しましたので……」
「あっ、はいっ。それでは……明日取りに……行きます」
「あのぅ、ウチは明日から3日間夏休みでして、もしお急ぎでしたら……」
「あっ、そうなんですか……それじゃ今日中に取りに行きます」
「はい、よろしくお願いいたします」
蘭はベッドから出るとカーテンを開けた。外には黒い雨雲がこの街の光を奪いながら、ゆっくりと這い進んでくる。
「あぁもう、13日の金曜日かぁ。何だか雨も降りそうだし。やだなぁ、今のうちに取りに行っちゃおうかな?」

蘭は赤い自転車に跨ると、勢いよく漕ぎ出した。


蘭の予想通り、ポツポツと大粒の雨が落ちてきた。
「あぁ、やっぱり降ってきたぁ。もぅ、最悪ぅ」
『夢の森駅』までは自転車で20分ほど掛かる。蘭はスピードを上げた。

「あれっ? こんなトコロに道あったけ?」
毎日の通勤で使っている道に見慣れない横道を見つけた。
「もしかして近道? 行ってみようか……」
蘭は不安を覚えながらもその道に入っていった。
その道は真っ直ぐな、何処までも真っ直ぐな道だった。不自然なほどに真っ直ぐな道は、どこからともなく沸いてくる霧に景色が薄れ、やがて白い霧の中に蘭と赤い自転車だけがポツンと浮かんでいた。
「やだぁ、ここ何処ぉ?」
気が付くと薄れゆく霧の隙間から、空を覆うような木々が見え始めた。
「えっ? 森? こんなトコあったけ?」
霧に包まれた森の中、不安を胸にペダルを踏む蘭の前に、古城のような洋館が現れた。城壁から続く巨大な二枚の木製の門扉は、まるで中世にタイムスリップしたようだ。
道はそのまま洋館の門につながっていた。
蘭がその門に辿り着くと、見上げるような二枚の門扉が軋みながら開いた。
門が開くと、道は石畳となって霧の中に浮かび上がり、館へと続いている。
蘭は自転車を押しながら石畳を歩き、やがて館の扉の前に立った。
蘭が扉に触れる前に、扉は彼女を招き入れるように音もなく開き、その扉の影から、1人の女が姿を現した。
見た目は35~40歳位だろうか、漆黒の大きな瞳にきれいな鼻筋。大きな真っ赤な唇には、三日月のような微笑みを浮かべている。流れる艶やかな黒髪は、真っ黒な修道女のような服に溶け込み、その長さは判らなかった。
「ようこそ、森山蘭」
それは鼓膜を通さず、直接脳に響いてくるような声だった。
「えっ?」
「わたしはイングリット。あなたを待っていました」
「どうして……あたしのことを?」
「どうぞ、お入りなさい」
その言葉に何故か逆らうことが出来ず、その館に足を踏み入れた。すると蘭の後で静かに扉が閉まった。
館はまさに中世の古城だった。蘭の目の前には石造りの回廊が延び、その回廊の両側には、無数と言っていい数の肖像画が掛けてある。
「どうぞ……」
そう言うとイングリットは、薄暗い回廊を奥へと歩いてゆく。
「あっ、あのぅ……」
蘭は戸惑いながらもその後を付いていった。
回廊を抜け石の螺旋階段を上り、やがてイングリットは1枚の扉の前で立ち止まった。
「ここがあなたの部屋です」

Comments 3

星羅  
10作目~ヽ(^o^)丿

すごいですね~(^^♪
一作目から実はリアルタイムで拝見してるせーらですが、
本当に次から次へといろんなシチュ・趣向で楽しませて(笑)くださいますね?

10作目の今回はちょっと不思議の世界…どんな責めがまっているのか…
ドキドキドキ…期待するのははしたないですかぁ~?えへっ…"^_^"
テンプレートもとっても綺麗な色ですね。

ちなみに…SE7ENっていう韓流スターご存知ですか?
TRI△NGLEのタイトルを見たとき思い出したんですが…
今度も思い出しちゃったなぁ~発想とび過ぎですね…あはっ…                 

P.S お子さまたちはほとんど根こそぎ連れて帰らせていただきました(^^♪
にゅうふぇいすの人魚さんは本来どんな色だったのかなぁ?気になるところです。
ないすばでぃ~腹筋きたえてらっしゃるみたいで、せーらもみならわなくっちゃ(^.^)
それではおやすみなさい~

2008/05/28 (Wed) 23:02 | EDIT | REPLY |   
蛍月  
雨ですねぇ

横浜は朝から雨が降っています。
でも、チョット涼しくなってちょうどいいかな。

あれは本当はピンク色なんですよ。あのポーズでピンクはさすがに気がとがめて・・・。
それでモノクロに。ここで公開するならカラーですけど (*^_^*)
最近は、そろそろ夏を感じる被写体を探しています。

2008/05/29 (Thu) 06:40 | EDIT | REPLY |   
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2008/05/29 (Thu) 07:03 | EDIT | REPLY |   

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土