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あなたの燃える手で

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バラ屋敷の人々


バラ屋敷


PROLOGU 
「デイジー、デイジー? 何処? 何処なの?」
「お嬢様ならもう、お出掛けになりましたよ。奥様」
この館のメイド『クララ ローレンス』は、自分より10センチは背の低い女
主人のシャーロットを見下ろし、ニッコリと微笑んだ。
目のすぐ上で真一文字に切り揃えられた髪。その髪はウエストラインに届き
そうな程長く、白と黒の典型的なメイド服の上からでも、その身体がスラリ
としたモデル体型であるコトが分かる。

「出掛けた? 出掛けたって何処へ」
「さぁ……」
「さぁって、あれほど今日は出掛けないでと言っておいたのに。あたしがそ
う言ってたの、あなたも知ってるでしょう?」
「はい。でも残念ながら……」
「残念ながらじゃないわよ。そんなコトじゃあなた、メイド失格よクララ。
本当にもうデイジーったら……」
シャーロットは廊下の先の、少し暗い玄関のドアを見た。
「もしかして奥様、デイジーお嬢様にお小遣いを差し上げたのでは……?」
「あげたわよ、毎月一日はお小遣いをあげる日だから。それがなに?」
「それです。デイジーお嬢様は浪費癖がございます。お小遣いを貰えばすぐ
に何処かへ飛んでいってしまいますわ」
「でもだからって……」
「そんなコトも分からずに、一方的にお嬢様を悪者に……。そんな奥様には
お仕置きが必要ですね」


 第一章:女主人シャーロットとメイドのクララ

夢の森駅で降りると、西口と東口があるのが分かる。
西口にはバスターミナルや商店街。東口には昭和の佇まいを残す街並みが続
き、駅からほど近いところには、白亜の巨塔 "夢の森病院" がある。、
そんな東口に、一際大きな館が建設され数年が経つ。
さすがに白い病院とは比べるべくもないが、西口の住宅街に建つ氷見川麗子
の館と肩を並べる位には大きい。
赤みの強い煉瓦タイルには、緑の蔓草が二階まで届き、館をぐるりと囲むフ
ェンスには蔓薔薇が絡まり、庭一面に咲き誇る色とりどりのバラは、はまる
でどこかのバラ園のようだ。
今では毎年薔薇の咲く頃になると、人々の口から "バラ屋敷" という言葉が
頻繁に聞かれるようになっていた。

元々シャーロットとデイジーは、シャーロットの夫であるウィリアムの赴任
先として日本にやってきた。
ウィリアムは由緒ある貴族の出身で、自国には広大な敷地と館がある。
しかしウィリアムは日本で急死してしまった。死因は脳溢血。
莫大な遺産を受け継いだ親子は国は帰らず、その全てを日本に移し、この街
で暮らすことにした。
一方のメイドのクララは、日本に来る前からメイドとしてムーア家で働いて
いた。クララには身寄りがない。そんなクララをシャーロットは日本呼び寄
せ、一緒に暮らすことになった。
しかしそれは表向きで、実はシャーロットとクララには、女同士の秘密の関
係があったのだ。

「奥様にはお仕置きが必要ですね」
クララの目が怪しく光った。そして絡みつくような粘着質な視線で、シャー
ロットを見つめた。その視線にシャーロットは、抗することができずに陥落
した。
「奥様……。素直にお仕置きを、今日はちょうどみんな出払っております。
お嬢様もお留守になったコトですし.……」
「わかったわ……。で? 場所は? あなたの部屋……?」
「はい。わたしの部屋で……。さぁ、参りましょう」
クララはシャーロットの腰に手を回しリビングを出た。

シャーロットの金髪と、クララの黒髪が並んで階段を上がっていく。
二人は二階の一番奥にある、クララの部屋の前で立ち止まった。
「分かっておりますね? 奥様……。この部屋に入ったら」
「えぇ、分かってるわ」
「結構です。では」
クララは白いエプロンのポケットから鍵を摘み上げると、それを鍵穴に差し
込んで回した。鍵は "カチャリ" と小さな音を立てて開いた。
「どうぞ、お入りください」

クララに促され、シャーロットは彼女の部屋に入った。



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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土