2ntブログ

あなたの燃える手で

Welcome to my blog

狩人はバニラの香り

28
「明日香ぁ、ママお店閉めるってぇ。どうするぅ?」
響子が『アマデウス』のドアに「本日休業」の札を下げると、ピンクのロールブラインドを降ろしながら言った。表は夕方とは思えない程の暗さだ。
「えっ?」
ブラインドを降ろすと、響子が明日香のテーブルに歩いてきた。
「ママは明日香にもう少しいて欲しいって」
「うん。もう少しいるよ。せっかく途中下車して来たんだし」
「うん。わかった。そう言っとくよ」
明日香はケーキを一口食べた。厨房の方で響子とママの話し声が聞こえる。
「これは明日も休みかしら」
ママが激しい雨音を聞きながら、心配そうに呟いた。
「うん。この台風、速度遅いらしいからすぐには行かないみたい」
「やぁ~ねぇ、この季節は……」
明日香がケーキを食べ終わった頃、厨房の洗い物が済んだのか、ママと響子が明日香の所にやってきた。
「明日香ちゃん。凄い雨だけど大丈夫? あたしと響子ちゃんは歩いて帰れるからいいけど……」
「ええ、駅まで近いし大丈夫ですよ。そこの道路渡るだけですから」
「そう? それならいいけど。いざって言う時はウチに泊まってもいいわよ」
「えっ? ママの家に?」
「いいのよ。どうせ誰もいないんだから……」
「そうよ明日香。お邪魔しちゃいなさいよ」
横から響子が口を挟んだ。
「それじゃ、いざって時はそうします」
明日香は軽い気持ちで返事をした。
「ねぇ、ママ。あっちのテーブルに行かない?」
そう言って響子は、店の奥になる隅のテーブルを指差した。そのテーブルは4人掛けで、壁側の席はベンチシートのように、隣のテーブルまで続く長いソファになっている。
「そうねぇ、そうしましょうか。いい? 明日香ちゃん」
「ええ、全然いいですよ」
明日香が飲みかけのコーヒーを飲み干した。
「それじゃあっちへ移りましょうか」
「あたしコーヒー入れてくる」
響子が最初に立ち上がり、厨房に姿を消した。
その間にママと明日香は奥のテーブルへ移動した。まず隅の奥にママが座り、その隣に明日香が座った。そして3人分のコーヒーを持ってきた響子が、明日香の隣に座った。3人の間隔は異様に密着している。
3人分のコーヒーを乗せたトレイには小さなラジオも乗っていた。
「一応ラジオも持ってきた。台風情報が流れると思うから」
響子がラジオのスイッチを入れると、タイミング良く交通情報が流れた。
ラジオの情報によると、『夢の森駅』を通る電車は止まっていた。復旧の見込みは立っていない。明日香は帰れなくなってしまった。
「どうする? 明日香。本当に電車止まっちゃったね」
「うん。どうしよう」
「だから、ウチに来ればいいじゃない。ねっ? 明日香ちゃん」
ママが明日香の太股に手を置いてその瞳を見つめた。その顔は、一層妖艶さを増していた。

Comments 2

マロ  

ぅう~・・・まだ何も起きてないのにドキドキだ(笑)
明日香もママの妖艶さにきっと期待しちゃうんでしょうね。
でも、この2人から同時にだと、
明日香は大丈夫なのか心配かも。(笑)

2007/10/14 (Sun) 17:43 | EDIT | REPLY |   
蛍月  

そうですね。
外に台風は来ているのですが、まだ3人は
"嵐の前の静けさ” といったところですね (笑)
(*^_^*)

しかしこの3人にも、そろそろ風が吹き始めるようです。

2007/10/14 (Sun) 20:28 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply

About this site
女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
About me
誠に恐縮ですが、不適切と思われるコメント・トラックバック、または商業サイトは、削除させていただくことがあります。

更新日:日・水・土