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あなたの燃える手で

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リリスと黒猫ガーゴイル


「さぁ、ガーゴイル。あなたはこの部屋から出ちゃだめよ。なにしろ1階は今
大変なことになってるんですからね」
リリスは自分の部屋に彼を移すと、取り敢えずベッドに彼を載せた。
彼はダラリとベッドに横たわると、それが返事だと言わんとばかりにリリスに
向かって欠伸をした。
「まぁ、お行儀の悪い子ねぇ。そんな大きな欠伸をして。もっとジェントルマ
ンにお成りなさい、ガーゴイル」
リリスは部屋を出ると、1階を片付けに階段を下りていった。

彼女の足音が聞こえなくなると、ガーゴイルはベッドから出窓に移った。そし
て総合公園のグランドや、夢の森聖教会を眺めると笑うように鳴いた。


「どうにか部屋別に荷物を分けるのは終わったわね」
百合香は最後の段ボールを床に置くと、体操のように腰を伸ばした。
「はい、あとは中身を所定の位置に並べるだけですわ」
「簡単に言うけどリリス、それが大変なのよね。まぁいいわ。取り敢えずコー
ヒーでも飲まない? 一息入れましょう」
「でも今は……、残念ながらインスタントしかありませんわ……」
「いいわよ勿論。お湯だけ沸かせばいいんでしょう。えぇっと、電気ケトルは
この箱だったかしら……? あとコーヒーカップね。カップはどこだっけ?」
百合香は自分を取り囲んだ段ボールをグルリと見回した。
するとリリスが1つの箱を開けた。
「コーヒーカップはこの箱に、それとインスタントコーヒーはこの箱。砂糖や
調味料はこっちの箱に入ってます。スプーンは食器と一緒に向こうの箱に」
「あっ、そう……、そうなの。よく知ってるわね、リリス」
「はい、あたしが入れましたから。全部判りますわ」
それから2人は、居間で段ボールをテーブル替わりにコーヒーを啜った。それ
がこの家での初めて口にした物となった。
「ねぇ、リリス。駅の近くのアマデウスっていうカフェ……。あそこに行って
も良かったわね」
「えぇ、でもあそこにはいつでも行けますわ。何しろこれからこの街に住んで
暮らしていくんですから……」
「それもそうね……、うふふふっ」
コーヒーカップから立ち上る湯気の向こうで、百合香は肩をすくめて笑った。


それから1週間が経ち、家の中は大体片付いてきた。
百合香も『Gargoyle Sleeping 夢の森店』の10月オープンに向け、煩雑な
日々が続き、最近は夜遅い帰宅が多くなっていた。
そんなある日の夜、リリスの部屋のインターホンが鳴った。
百合香の部屋とリリスの部屋はインターホンが引かれており、用事があるとき
は、ナースコールのようにそれで呼びつけることが出来るようになっている。

猫じゃらしで彼と遊んでいたリリスは、壁のボタンを押した。
「はい、百合香様」
壁に向かって返事をするその姿は、まるで壁と話をしているようにも見える。
「リリス、お願い」
スピーカーからは、気だるそうな百合香の声が聞こえた。
「はい、分かりました。すぐ参りますわ」
ボタンを放すとリリスは、床にいる彼に向き直った。
「ごめんねガーゴイル。またお呼ばれよ。今夜は犬かしら、それとも奴隷?」
リリスは彼にニッコリと微笑むと、猫じゃらしと一緒にベッドに載せた。
「チョット行ってくるわね。そこでイイ子にしてるのよ」
リリスはネグリジェのまま部屋を出た。部屋を出るとき、彼へのいつものウイ
ンクを忘れなかった。

彼女が出て行くと、ガーゴイルは静かに金色の目を閉じた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土