白い魔女
58
御堂はゆかりの両足に黒革の足枷を嵌めた。足枷にはD字形のリングが付い
ている。足枷のリングに床のリングを繋ぎ、再びウインチを巻き取っていく。
ゆかりの両腕が伸び、体が引き上げられ、やがて踵が浮いて体中の関節が引
き伸ばされ始めた。大体延びきったところで、ゆかりの体が引き延ばされ過
ぎないように、微調整をしながら細かくスイッチを入れる。
それは1センチずつ伸ばされるような優しさのようで、その実、限界ギリギ
リまで引き延ばすという残酷な作業だった。
「どう? 苦しい?」
「いっ、いえっ大丈夫です」
「そう」
御堂はスイッチを離すと、唇を妖しく歪めながらゆかりの後ろに回り込んだ。
そしてその場にしゃがみ込むと、ゆかりの外側のくるぶしを指先で優しく引っ
掻いた。そしてその爪の先はゆっくりと上に上がってくる。
ツルツルとした陶器のような脛を、柔らかくそして今は張りつめたふくらはぎ
を、両足同時に御堂の10本の指先がジワジワと刺激しながら這い上がってる。
「あっ、あっ、あはぁぁ~。うぅ~」
「んん? 感じるぅ? ここは? ほぉ~らぁ」
御堂の指は膝の裏で止まり、モゾモゾと動き続ける。
「あぅっ、いやぁ~。ああぁ」
御堂はその場に立ち上がると、ゆかりのお尻にその手を伸ばした。
千鶴は盲目の恋に落ちていた。
相手の気持ちも仕事も、百も承知で。頭では分かっていても、身を焦がす炎は
それでも消えることを知らず、内から千鶴の心を焦がしていった。
辛いだろうと思う。好きな人がいながら、思いの内を伝えても振り向いても
らえず、それでも想い続けるのは。
今もどこかの誰かにメールを送っているかもしれない。もしかしたら、今頃
別の子とデートしてるかもしれないのだ。
彼はホストなのだから。
自分は憧れの響子先輩と思い出を作ることが出来た。
でも、千鶴は。
「千鶴……」
沙也加の胸ですすり泣く千鶴の涙が、ナース服を濡らしていった。
自分に出来る事、今はこうして一緒にいてあげることぐらいしか出来ない。
それでも沙也加は千鶴を守ってあげたかった。
それはナースとしてだけではなく。一人の友人、いやこの感情は女性として
女性を想う、そう、学生時代に響子先輩に抱いた恋心と同じ想いだ。
自分は響子先輩を千鶴に重ねているのではなく、千鶴本人が好きなのだ。
そうだ、今分かった。
(千鶴、あたしは……あなたが好き)
窓の隙間から強まった雨音が忍び込んでくる。中庭の大銀杏は、無数の雨粒
を垂らしながら、二人の想いを見守っているようだった。
御堂はゆかりの両足に黒革の足枷を嵌めた。足枷にはD字形のリングが付い
ている。足枷のリングに床のリングを繋ぎ、再びウインチを巻き取っていく。
ゆかりの両腕が伸び、体が引き上げられ、やがて踵が浮いて体中の関節が引
き伸ばされ始めた。大体延びきったところで、ゆかりの体が引き延ばされ過
ぎないように、微調整をしながら細かくスイッチを入れる。
それは1センチずつ伸ばされるような優しさのようで、その実、限界ギリギ
リまで引き延ばすという残酷な作業だった。
「どう? 苦しい?」
「いっ、いえっ大丈夫です」
「そう」
御堂はスイッチを離すと、唇を妖しく歪めながらゆかりの後ろに回り込んだ。
そしてその場にしゃがみ込むと、ゆかりの外側のくるぶしを指先で優しく引っ
掻いた。そしてその爪の先はゆっくりと上に上がってくる。
ツルツルとした陶器のような脛を、柔らかくそして今は張りつめたふくらはぎ
を、両足同時に御堂の10本の指先がジワジワと刺激しながら這い上がってる。
「あっ、あっ、あはぁぁ~。うぅ~」
「んん? 感じるぅ? ここは? ほぉ~らぁ」
御堂の指は膝の裏で止まり、モゾモゾと動き続ける。
「あぅっ、いやぁ~。ああぁ」
御堂はその場に立ち上がると、ゆかりのお尻にその手を伸ばした。
千鶴は盲目の恋に落ちていた。
相手の気持ちも仕事も、百も承知で。頭では分かっていても、身を焦がす炎は
それでも消えることを知らず、内から千鶴の心を焦がしていった。
辛いだろうと思う。好きな人がいながら、思いの内を伝えても振り向いても
らえず、それでも想い続けるのは。
今もどこかの誰かにメールを送っているかもしれない。もしかしたら、今頃
別の子とデートしてるかもしれないのだ。
彼はホストなのだから。
自分は憧れの響子先輩と思い出を作ることが出来た。
でも、千鶴は。
「千鶴……」
沙也加の胸ですすり泣く千鶴の涙が、ナース服を濡らしていった。
自分に出来る事、今はこうして一緒にいてあげることぐらいしか出来ない。
それでも沙也加は千鶴を守ってあげたかった。
それはナースとしてだけではなく。一人の友人、いやこの感情は女性として
女性を想う、そう、学生時代に響子先輩に抱いた恋心と同じ想いだ。
自分は響子先輩を千鶴に重ねているのではなく、千鶴本人が好きなのだ。
そうだ、今分かった。
(千鶴、あたしは……あなたが好き)
窓の隙間から強まった雨音が忍び込んでくる。中庭の大銀杏は、無数の雨粒
を垂らしながら、二人の想いを見守っているようだった。