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あなたの燃える手で

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アリスの魔法

21
その日は少し空模様の怪しい日だった。
涼子は気になり始めたアリスに会いに、車で夢高へと向かった。
ダッシュボードには、取ったばかりの免許証が入っている。
練習を見に来たという名目で、涼子はアリスを見た。
そんな涼子を、アリスもキラキラと潤んだ目で見ている。
涼子に見られていることを意識してか、アリスはプレーに集中できていないよ
うだった。それはまるで、父兄参観日に教室の後ろに立ったお母さんを気にす
る子供のようだ。
涼子は内心可愛いと思いながらも、練習中はOGとして少し厳しい顔で後輩達
の練習にあたった。
しかしその練習で、アリスが足を挫いたのだ。
最後に行われた試合で、足を滑らせたアリスはそのまま立てず、涼子の車で帰
宅するコトになった。


あたしは車の助手席で、小さくかしこまっていた。
だって、だって、隣にはあの涼子先輩がいるんだよ。
もうあたしはドキドキし過ぎて、心臓が口から飛び出しそう……、って言う
か、全身が心臓になったみたいに脈打っている。
だって、だって、この状況。まるで先輩とドライブしてるみたいなんだもん。
あぁ、足を挫いて良かった。
あたしは変な納得の仕方をしながら、おかしなコトに気がついた。
それは、道が違うのだ。
この車に乗ったとき、あたしは自宅までの道のりを簡単に説明したんだけど、
どうもそれと走っている道が、いや、方向そのものが違うみたい。
「あのう……、先輩? 道が……、違うみたいなんですけど……」
「いいのよ、この道で」
「えっ?」
「あたしのアパートに向かってるんだから」
「えっ? せ、先輩のアパートに? どうして……」
「いいから、あなたは大人しくしてなさい」

やがて車は先輩のアパートに到着した。
舗装されていない駐車場に車を乗り入れると、先輩はとてもスムーズに車を
バックさせ、先に駐まっていた車と車の間に自分の車を入れた。きっといつも
駐車しているから慣れているんだろう。
「さぁ着いたわ。ここよ」
「あっ、は、はい……」
あたしがドアに手を掛けると、先輩がそれを制した。
「チョット待ってて、今ドアを開けてあげる」
先輩は先に降りると助手席側に回り込み、あたしの為にドアを開けてくれた。
あたしはもう恐縮しまくりだ。
「す、すいません」
「いいのよ、足を怪我してるんだから……」
あたしは改めて自分の右足首を見た。
ソコには湿布の上から大げさなくらいに包帯が巻かれている。だから靴は履い
ていない。それがまた怪我を痛々しく見せているような気がした。
「大丈夫? 歩ける?」
掴まりなさいと言わんばかりに、先輩が手が差し出してくれた。
「あっ、はい。大丈夫です」
でも結局、あたしはその手に掴まった。そしてフラつきながら助手席からゆっ
くりと立ち上がった。
そして立ち上がったその瞬間、あたしはバランスを崩し、何と涼子先輩に抱き
ついてしまったのだ。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土